大判例

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東京高等裁判所 昭和33年(く)66号 決定

被告人市田博に対する公職選挙法違反、被告人福井順一に対する同法違反及び証憑湮滅唆、被告人小玉治行に対する証憑湮滅教唆被告事件の記録、被告人小玉治行に対する勾留関係書類等の関係資料に基き考察するに、本件教唆犯の教唆の場所及び抗告人小玉治行の住所、相被告人である福井順一の昭和三三年六月二一日以降の住所、弁護人が取調を申請せんとする証人小原茂彦、市田博、相沢文夫、鈴木梧郎、大野寛良、野口道子等の住居検証の場所並に各弁護人の事務所がいずれも東京都内に存することは弁護人の疎明資料である住民票各証明書、起訴状によつて明白である。而して抗告人が本態性高血圧症、狭心症、(亜急性大腸炎)下行結腸の狭窄により千葉大学医学部附属病院に入院治療を受けていること、臥床安静メプロバメートによる鎮静、心冠血行の改良、大腸炎の治療等により着々その効果をおさめており、昭和三三年九月一日現在において今後二ケ月の臥床安静を要する状態にあることは抗告人に対する同病院院長医師斎藤十六の診断書、医官荒木栄吉、医師小野清四郎の各診断書、裁判官鈴木雄八郎の証人小野清四郎に対する尋問調書、前記斎藤十六作成の容態書によりこれを認定することができる。

しかしながら本件証憑湮滅教唆罪の実行正犯の犯罪地は千葉地方裁判所管内であり、本件は福井順一の公職選挙法違反及び証憑湮滅教唆被告事件と同一事件として起訴されたものであり市田博の公職選挙法違反事件と表裏一体をなすものであり同事件と共に千葉地方裁判所において審理するのが相当である場合も考えられ抗告人が疾病のため或は分離の上審理を進行することもあり得るのであるが、その際は抗告人の出頭し得る健康状態を確認した上、裁判所は審理を進行することが当然の措置であるから、千葉地方裁判所が移送請求を却下したことは決して現在静養加療中の抗告人に対し直ちに審理を強行するものではないと解される。しからば弁護人において取調請求予定の証人の住居及び検証の場所が東京都内であるとしても、検察官側において予定する証人は、千葉地方裁判所管内に居住しているとのことであるから、千葉と東京とは距離的にもさして遠隔不便のものであるとは認められないところで、時間的経済的負担は千葉地方裁判所において審理することが、東京地方裁判所において審理するに比し弁護人抗告人等に対してはある程度不利益なところもないではないが、前叙の各事情を総合考量するときは原審が本件移送申立を却下したために抗告人が著しく利益を害されるとは到底認めることができないから本件即時抗告はその理由がない。

(大塚 本田 渡辺辰)

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